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シン・シティ プレミアム・エディション
出演:
ジェネオン エンタテインメント
発売日 2006-06-23
オススメ度:★★★★


犯罪の街「シン・シティ」を舞台に、これでもか、これでもかとハードなアクションが詰め込まれた一作。ロバート・ロドリゲスと、原作コミックの作者であるフランク・ミラーが共同で監督した。幼女連続殺人事件を追いつつも、犯人が権力者の息子だっかことから、逆に逮捕されるハーティガン刑事。一夜を共にした娼婦が殺され、復讐に燃える前科者マーヴ、悪徳警官を追いつめるドワイト。3人の男たちが愛と信念をかける、3つのエピソードが展開していく。
シャープなモノクロ映像に、女のドレスなどポイントだけ色づけされた「パートカラー」が斬新。銃や刀を使ったバイオレンス場面は強烈だが、流れる血がミルクのように真っ白だったりと、残酷度を薄める美しさもたたえている。ロドリゲスの盟友、クエンティン・タランティーノがゲスト監督として参加したシーンでは、緊迫しつつも、とぼけた味もある男同士の会話に、彼のセンスが際立つ。オールスターキャストが、原作のキャラそっくりの外見になって熱演・怪演。顔じゅう傷だらけのミッキー・ロークや、姿がよく見えないが、超人的な戦闘技術を披露するイライジャ・ウッドがインパクト大だ。女性キャストのセクシー度も半端じゃない。最後までキープされるテンションの高さには、恐れ入るばかり。(斉藤博昭)

とにかく素晴らしい。 2005-09-03
本作は演出のスタイリッシュばかりが注目されるが、「ハード・グッドバイ」と「イエローバスタード」は、紛れも無く不器用な男たちの切ないラブストーリーだということに注意して欲しい。前者では、不器用だが、純粋な大男マーヴが名前も知らない女性の愛のために復讐を誓い、そして散っていく(準備を整えてリベンジ!という設定が面白い)。後者のエピソードは被害者の少女と老刑事の恋である。しかし、2人の関係は犯罪によって始まり、犯罪によって終わりを告げる。ラストは老刑事の哀愁をも感じさせて素晴らしい。一方、「ビッグ・ファット・キル」はギャング映画のようで3つのエピソードでは一番浮いていた。
しかし、これだけ奥の深いストーリーを扱っていながら、娯楽映画としても非常に完成度が高いのが本作の憎いところである。ある意味、オタク監督ロドリゲスでなければ撮れなかっただろう。ストーリーはもちろん、1カット、1カットが原作に細かい点まで(タラのパートですら)忠実に作られており、フィルム・ノワールの影響を受けた原作の雰囲気は十二分に再現できていると言っていい。とくにオープニングとそれに続く原画の流れるオープニング・タイトルだけでもゾクゾクするようなスタイリッシュさだ。オタク監督は個性派俳優を使わせるとベテラン監督以上にその個性を引き出せるのだ。本作では各エピソードの主役のM・ロークは粗野、C・オーウェンはとにかくクール、B・ウィリスは渋く、頼れるキャラを好演し、J・アルバは妖艶、B・デル・トロ、E・ウッドはまさに怪演である。エピソードの配置は「パルプ・フィクション」を髣髴とさせ、これまた絶妙だ。「ビッグ・ファット・キル」は、まさにサービス満載で、そういった意味ではこれがR・ロドリゲス監督の本領発揮であり、若手の映画ファンに一番受けるシーンかもしれない。つまり、娯楽要素はB・F・K>H・G>Y・Bなのだが、ドラマでは逆になるのである。ドラマにおいては「パルプ・フィクション」のような娯楽面を押し出した映画とは一線を画している。
この映画は見終わってすぐにマイ・ベスト10に入った。アメコミの映画化は数あれど本作はそれらの中でも間違いなく群を抜く出来である。間違いなくロドリゲス、ミラーの最高傑作だろう。
これからはハードボイルドな雰囲気、登場人物には「F・ミラー的」という言葉を使いたい。
ちなみに、最初はスタイリッシュさに酔いしれ、2度目はストーリーに注目する、という見方をお勧めする。


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ロード・オブ・ウォーロード・オブ・ウォー
出演:
日活
発売日 2006-06-09


ウクライナから移民としてアメリカへ渡り、武器の密輸商人となったユーリーがたどる衝撃の運命。ユーリーのキャラクター像や、エピソードの数々は、実在の武器商人の証言を基に作られている。ソ連の崩壊により、余った武器を、アフリカの独裁国家などに横流しするユーリーを、インターポールの刑事ジャックが追跡。そこに、ユーリーの妻や弟との悲痛なドラマが絡んでいく。
危険な顧客を相手にした、ユーリーの臨機応変の対応が見もので、ニコラス・ケイジが、本心を表情に出さないユーリーにハマリ役。「リベリア」といった実際の国名や「ビン・ラディン」、さらにはアメリカ大統領の責任にも言及するなど、あまりにも現実的な要素やセリフに、観ているこちらが「ここまで描いていいのか?」と心配になるほどだ。世界に存在する銃の数なども、恐ろしい現実を伝える。ただ、映画作品として、全体にサスペンスなのか、人間ドラマなのか、はたまたブラックコメディなのかが曖昧。ジャンルを特定させない不可解さも、アンドリュー・ニコル監督の作風なのだが。(斉藤博昭)


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フライトプランフライトプラン
出演:
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
発売日 2006-05-24


急死した夫の遺体を飛行機で運ぶカイル。しかし、一緒に乗ったはずの娘が、機内で行方不明に…。乗務員や他の客たちは、娘がいなかったと証言。乗客リストにも名前が残っておらず、娘の荷物も消えているという衝撃サスペンス。ジョディ・フォスターが、自分の記憶を信じ、必死に娘を探すカイルを演じる。
映画の前半は「結末がどうなるのか?」という謎に翻弄されるドキドキの展開。すべてはカイルの妄想かとも思わせるが、機内の怪しげな人物、乗務員の不可解な言動、さらに正体を隠して乗り込んでいる捜査官の存在や、ジョディの迫真演技で、謎は深まるばかり。結末については、観る人によって意見が分かれるかもしれない。ストーリーと同じくらい見どころなのは、本作のためにデザインされた飛行機の内部。2階にも広がるエコノミークラスのスペースや、ゴージャスなバー・カウンター、迷路のような隠しスペースなど、そのユニークな構造は一見の価値アリだ。(斉藤博昭)


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ミュンヘン スペシャル・エディションミュンヘン スペシャル・エディション
出演:
角川エンタテインメント
発売日 2006-08-18


1972年のミュンヘン五輪。パレスチナ人ゲリラが11人のイスラエル選手を人質にとる。結局、人質は全員死亡。スピルバーグ監督が歴史の暗部を直視した本作は、その後、イスラエル側による報復作戦にフォーカスが当てられている。暗殺グループとして組織された5人の工作員が、事件に関与したとされるパレスチナの重要人物を標的に、ヨーロッパ各国で暗躍。次々と彼らを暗殺していく。
スピルバーグの視点は、あくまでもニュートラルな立場を貫き、イスラエル、パレスチナのどちらかに肩入れすることはない。実際のニュース映像も挿入した五輪の事件や、前半の暗殺シーンは、徹底してリアルで、ときには過剰なまでのグロテスクな描写もある。中盤からは、立場が変わって命を狙われる工作員の心理ドラマが観る者を圧倒。報復の虚しさが伝わる展開になっている。工作員のリーダーを演じるエリック・バナが、その葛藤を全身全霊で体現。ラストシーンはニューヨークなのだが、その風景に追加された「あるもの」の映像もまた、終わらない報復の悲劇を訴えているようだ。(斉藤博昭)


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男たちの大和/YAMATO 限定版男たちの大和/YAMATO 限定版
出演:久石譲 /長渕剛
東映
発売日 2006-08-04


2005年4月。鹿児島県の漁師・神尾(仲代達矢)はかつて戦艦大和の沈んだ地点まで一人の女性・内田真貴子(鈴木京香)を連れて行くことに。かつて大和の乗組員であった神尾は、およそ60年前の、あの戦争の日々を思い起こしていく……。辺見じゅんの同名ドキュメント小説を原作に、『新幹線大爆破』『未完の対局』などの巨匠・佐藤純彌監督が手がけた戦争超大作。実寸大の大和を建造しての撮影はリアルな迫力に満ちており、また当時の若者たちの厳しく熱く、そして哀しい青春群像が魅力的に綴られるとともに、組織と個人の関係性にこだわり続ける佐藤監督ならではの鋭い軍隊批判が垣間見られていく。戦時下の女性たちの描写もさりげなく描かれているのもいい。戦闘シーンの迫力は日本の戦争映画で最大規模のものであろう。その上で60年後の現代と対比させながら、明日への希望を示唆する構成も大いに功を奏しており、まさに今の時代ならではの深く温かい人間ドラマの傑作として屹立している。(増當竜也)


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ハリー・ポッターと炎のゴブレット 特別版ハリー・ポッターと炎のゴブレット 特別版
出演:
ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日 2006-04-21


メガヒットファンタジーの第4作は、青春ドラマとしての側面が色濃くなり、より大人も楽しめる仕上がりになった。クィディッチ・ワールドカップを観戦しに来たハリーだが、夜空に「闇の印」が浮かび人々は混乱。ホグワーツ校で開催される「三大魔法学校対抗試合」では、選手を決める「炎のゴブレット」が、17歳以上という資格にもかかわらず、14歳のハリーを選出するのだった。
体長9mものドラゴンや、水中での大救出など、対抗試合の場面は想像を超えるリアル感とスケールで映像化された。個性的な制服をまとった他校の生徒や、ついに現れる宿敵ヴォルデモートの姿もシリーズファンにうれしい限り。監督は、シリーズ初のイギリス人であるマイク・ニューウェル。ハリーの初恋、ロンとの確執、嫉妬されるハーマイオニーなど、ドラマ部分をしっかり描きながら、原作以上に「友情」というテーマをくっきり浮かび上がらせる。ラストシーンで主人公3人が語り合うセリフは、しみじみと感慨深い。(斉藤博昭)


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